『雪人 YUKITO』緻密なハードボイルドミステリー漫画のネタバレ感想
ベストセラー作家の大沢在昌先生の傑作小説である「北の狩人」を、もんでんあきこ先生がコミカライズしたミステリー漫画『雪人 YUKITO』。
緻密に練られたミステリーは圧巻そのものであり、読むほど驚きを与える物語となっています。そして、漫画版限定のキャラやストーリーも盛り込まれ、小説ファンの方でも楽しめる大満足の作品です。
結末まで一気読みが必須となる『雪人 YUKITO』のあらすじや登場人物、見どころをネタバレや感想を含めてご紹介していきます。
大沢在昌先生×もんでんあきこ先生のタッグが描いた『雪人 YUKITO』のあらすじ
大沢在昌先生が描いた大人気小説「北の狩人」をもんでんあきこ先生がコミカライズした本格ハードボイルドミステリーの『雪人』の設定やあらすじをご紹介していきます。
読むほど驚かされて感動できる作品となっているので、『雪人』の魅力を知ってください。
作品の設定や概要
- 原作:大沢在昌(小説「北の狩人」より)
- 作画:もんでんあきこ
- 出版社:小学館(ビッグコミックスペリオール)
- ジャンル:コミカライズ、ミステリー・サスペンス
- 巻数:5巻(完結)
設定として、欲望の街・新宿を舞台に物語が繰り広げられ、主人公の雪人が12年前の事件を追うストーリーとなっている。
12年前に2つの事件があり、ひとつは秋田の繁華街での傷害事件。酔っ払い同士のケンカでロシア人が重傷を負い、目撃情報から犯人は秋田出身で田代組構成員の苅部耕二と断定された。
苅部は秋田県警の捜査の手をかいくぐり東京に逃走したが、新宿で別件逮捕。秋田に移送されることになった。
秋田県警から迎えに来たふたりの刑事が苅部を連行していった。そして、その後、3人の足歩取りはぷつりと途絶える。
JP新宿駅構内に刑事のものと思われる血痕が発見され、数日後、荒川の河川敷でその刑事のひとりの刺殺死体が発見された。それがふたつめで警官・梶真人が殺された事件。
梶真人は主人公の雪人の父親で、雪人は自分の父の死の真相を確かめるために新宿で事件を調べていく。
『雪人』は「北の狩人」という大沢在昌先生が書いた小説のコミカライズです。
大沢在昌先生は「新宿鮫」シリーズの作者であり、ハードボイルドの巨匠として知られています。その作品をもんでんあきこ先生がアレンジしてコミカライズしています。
原作の「北の狩人」も気になる方は是非ご覧になってみてください。
あらすじ
「田代組を知らないか…?」。10年前に潰れた暴力団のことを聞き回る謎めいた青年の雪人。
朴訥な秋田弁を話す田舎者の彼は、一体何を企んでいるのか。雪人の登場が欲望の街・新宿に波乱を巻き起こす…!
『新宿鮫』シリーズのベストセラー作家・大沢在昌の傑作小説「北の狩人」を、実力派作家・もんでんあきこが完全漫画化!
超強力タッグが描く本格ハードボイルドが、新宿に新たなヒーローを誕生させた!!
引用)コミックシーモア
全員から目が離せない『雪人』の主な登場人物
『雪人』の登場人物は、ほとんど全員が事件にかかってくる人物となっているので、1人も目を離すことができません。
そんなつながりを持った登場人物たちをご紹介していきます。
梶雪人(かじ ゆきと)
秋田から新宿にやってきた主人公の青年。なまりがかなりある話し方をする。
新宿には「田代組」という組を探しに来ていて、ヤクザのような危なげな人のところへ行っては直接聞こうとするなど、肝がとても据わっていて腕っぷしも強い。
母親は半年前に亡くしていて、父親は13歳の時に亡くしている。刑事をしていた父の死の真相を知るために新宿で「田代組」を探している。
祖父はマタギ(狩猟を専業としている人)をしていて、雪人にもマタギの血が流れている。マタギの血のためか、とても鋭い考察を繰り広げることがある。しかし、どこか抜けたところもある。
人のことを骨格で覚えることができ、1度見た人を決して忘れない。
藤田杏(ふじた あん)
雪人のことを田舎臭いと思いながらも透き通った氷のような目が気になっていたボッタクリバーのキャッチの女の子。
そして偶然雪人と遭遇することが重なり、互いに惹かれ合っていくようになる。雪人のために事件の捜査に協力する。
両親が「赤毛のアン」オタクなため「杏」という名前を名付けられた。
エリ
田舎から新宿に来た雪人をみて、カモだと思ってボッタクリバーに連れて行った杏の友達。
キャバ嬢も過去にやっていて、そのときに恨みをいくつか買っている。
宮本(みやもと)
新陽会という組に所属しているヤクザ。以前は「田代組」に所属していたが、「田代組」の組長は襲撃されて植物人間となっていて、組は消滅した。
苅部耕二という指名手配犯を匿っていたが、苅部が殺されてしまったことで、犯人を見つけるために雪人に協力するようになる。
芯の通った人物で、とても義理堅い。
「田代組」襲撃事件や苅部が殺された真相を探っている。
佐江(さえ)
真ん丸い体型でV字に禿げた髪が特徴的な新宿の警察。出身は千葉。
新宿の秩序を保つことを大切にしている。梶雪人の得体の知れない力を感じ、興味を示していて、次第に雪人に協力するようになる。
苅部耕二(かりべ こうじ)
田代組の構成員。秋田と新宿で事件を起こし、移送中に警官を2人を殺害して逃亡したとみられ、指名手配されている。
「田代組」時代は、宮本の舎弟だった。
山倉玉緒(やまくら たまお)
「鹿角」という秋田料理屋の女将をやっている女性。苅部耕二の姉。
幼い頃に両親を事故で亡くしていて、親戚をたらい回しにされた挙句、秋田の施設に入れられていた。そのため、弟とずっと2人で寄り添って生きてきていた。
結婚はしているが、夫は急な発作で亡くしている。
鴨下(かもした)
青年実業家。エリのキャバクラ時代の客で杏とも何度か一緒に遊んだことがある。
東京出身と言っているが、田舎臭くて、とにかく品のない人物。仕事は、外車中心の中古車ディーラーなどをやっている。
「梶」の名前に反応して、杏に雪人を紹介するようにお願いする。
新島(にいじま):新田アキラ(にった あきら)
正体不明の男。苅部を殺したとみられる人物。
感情が抜け落ちている様子があり、腕っぷしは相当なもの。カタギだが、何でも屋をしていて、ヤクザにお金を貸したり用心棒をしたりしている。
近松(ちかまつ)
「田代組」で宮本の部下だったが、新陽会では大幹部として出世したヤクザ。
宮本のことを慕っていて、宮本を最高幹部に引き上げるために自分はのし上がろうとしていた。
上納金を多く納めているため地位は高いが、宮本と違って周りからの人望は全くない。
木下(きのした)
かつて苅部と仲が良かったヤクザ。近松についていたが、近松を見捨てている。
宮本のことはとても慕っている。
瀬尾(せお)
宮本のことを尊敬している坊主頭で眼鏡のヤクザ。PCにも強く、宮本にも手を貸す。
また、とても用心深く用意周到なことが取り柄である人で、いろんなものを常に用意している。
呉林(くればやし)
雪人を自分の息子のように可愛がっている人物。雪人が新宿に行くときもマンションや携帯まで用意してあげていた。
また警視長であるが、ヤクザとのつながりも持っている。
細田(ほそだ)
佐江の情報屋であるおじさん。バーのマスターをしている。
佐江に協力しているが、ヤクザを排除しようとする警察のことは批判している。
佐藤(さとう):偽名
尾行が上手いフリーライターをを名乗る男。麻薬取引のスクープを得るために、捜査しているときに雪人と出会う。
大橋課長(おおはし)
雪人の上司。雪人のことをとても大切に思っていて、雪人のわがままにも協力する。
尾田係長(おだ)
大橋課長によって窓際に追いやれた刑事。麻薬の売買を行っている。
梶吾一(かじ ごいち)
マタギの頭領をしている雪人の祖父。ドジなところもあるが、マタギの鋭さも兼ね備えている。
向井春信(むかい はるのぶ)
毎年雪人の祖父のもとへ訪ねてくる馴染みのあるおじさん。祖父の代わりに雪人が釣りガイドをしているときに雪人と出会う。
雪人のまっすぐな性格に惹かれて、力を貸すようになる。
面白い!『雪人』の3つの見どころ(ネタバレあり)
登場人物たちの魅力、ミステリーの巧妙さ、事件と登場人物たちのつながりにも感動できる『雪人』には面白い見どころがたくさん存在します。
そんな数あるの見どころの中でも特に注目してほしいポイントを3つに絞ってご紹介していきます。
梶雪人のかっこよすぎる人間性
『雪人』では、主人公である梶雪人の人間性が見どころとなっています。
雪人は秋田の田舎から東京の新宿にやってきた田舎者なのですが、ヤクザ相手でも臆することなく正面から立ち向かい、そして自分の芯を決してブレさせない正義感をもっているのです。
どんなときでもまっすぐな気持ちを持って、恥ずかしいことでも平気で言ってしまう雪人には、男性女性問わず魅入ってしまうことになるでしょう。
様々な事件が交錯し、登場人物たちの思惑がぶつかり合う中でも、全くぶれずに自分の道を歩み続ける雪人の生き様はとてもかっこいいので、是非多くの方に見届けてもらいたいです。
梶雪人が追う事件と宮本が追う事件の真相
主人公の雪人の魅力だけでなく、雪人が追う事件とヤクザの宮本が追う事件の真相も見どころとなっています。
雪人は警官だった父親が殺された事件を追うために新宿にやってきて、刑事の佐江やヤクザの宮本と知り合うことになります。
そして宮本は、雪人が新宿に来たタイミングで大切な人を殺されしまうため、その犯人を探ろうとするのですが、なぜか雪人の事件と同じ糸をたどることになるのです。
雪人は持ち前のマタギの嗅覚と記憶力を使い事件を暴いていき、同時に宮本も独自の捜査で事件を暴いていき、2人が共闘するような関係が結ばれるのですが、謎の全てがどこかでつながっていくストーリーは、脳に快感を覚えるほど驚愕させられます。
2つの事件がどのように繋がっていき、そしてどんな結末を迎えるのかは、最後まで一気読みしてもらいたいです。
登場人物たちの関わり
『雪人』の中で、読んでいて1番感動したのが登場人物のつながりです。
物語に登場する人物、名前が挙がってくる人物すべてが、事件や主役たちに深く関わっていくるので、「えっ、この人がそうだったんだ!!」のような衝撃が何度も何度も訪れて本当に感動しました。
ヤクザと警察が協力して事件を追うようになったり、事件の犯人側も意外な人物とつながりを持っていて、雪人たちを追い詰めていくのです。
その攻防を見ていて何を信じていいのかわらかなくなるほど混乱しますが、終盤に進むにつれて全ての謎が解けていくので、最後まで、そして細部まで楽しめる作品になっています。
意外過ぎる登場人物たちのつながりには、驚かされながら楽しめること間違いないので、全員から目を話さないように物語を読んでみてください。
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ラストまで一気読み必須の『雪人』はこんな人におすすめ
『雪人』は、ミステリー作品好きの方には特におすすめしたい作品です。
物語は、田舎から新宿にやってきた雪人が、自分の父親を殺した事件を追うというものなのですが、漫画とは思えないほどの巧妙に練り込まれたミステリーが繰り広げられています。
実際に小説のコミカライズなのですが、謎の質や物語の構成が見事で、終盤に行くほど怒涛の勢いで伏線を回収していく展開はミステリー好きにはたまらないものとなっているのです。
ミステリー好きでなくても、登場人物たちの関わりや事件の謎に感動できる内容となっているので、是非多くの方に『雪人』をご覧になってもらいたいです。
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管理人の思う『雪人 YUKITO』が伝えたいこと(感想)
『雪人』では、人のつながりの大切さを伝えたいように思えます。
主人公の雪人は、誰にも迷惑をかけないために仕事の辞表も出して1人で事件の捜査をしようとします。しかし、新宿で出会った杏や佐江や宮本に助けられたり、他にも多くの人のつながりの力を借りて事件の真相に迫っていくのです。
そんな雪人たちの姿を見ていると、人のつながりの強さを心から実感できて、些細な出会いでも大切にしなくていけないと思えてきます。
ミステリーから得られる驚きの感動だけでなく、人とのつながりの強さなどの心に響く感動も得られる作品となっているので、この機会に是非『雪人』をご覧になってみてください。
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『雪人 YUKITO』の評価まとめ
最後に記事執筆者の評価と他の漫画サイトからの評価をまとめてみました。
漫画を購入するときのひとつの指標として、よかったら周りの評価も参考にしてみてください。
当サイトの評価 | 4.4(記事作成者の評価) |
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コミックシーモア | 4.7(176件の評価) |
まんが王国 | 4.9(8件の評価) |
Renta! | 4.7(295件の評価) |
BookLive | 4.6(14件の評価) |
※それぞれ5段階評価となっています。
これまでも見どころなどで詳しく紹介してきましたが、完成度の高いミステリーと登場人物たちの関わりの緻密さに感動させられる作品となっているので、高評価をつけました。
読めば読むほど衝撃を受けるハードボイルドミステリーとなっているので、是非ご覧になってみてください。
原作の「北の狩人」はこちらになります。