『たーたん』漫画のネタバレ感想|童貞の父と犯罪者の娘が紡ぐ偽親子コメディ
童貞にして突然一児の父になってしまった1人の男性と、実の父親は15年間育ててくれた目の前の男性ではなく、人を殺し刑務所送りにされた犯罪者であることを知らない中学三年生の女の子との日常を描いた『たーたん』。
1巻だけで3回泣いて、その後2巻3巻と必ず1回は泣いた筆者が、『たーたん』のあらすじや登場人物、見どころをネタバレや感想を含めてご紹介していきます。
偽物の親子が育んだ、優しくて暖かい本当の親子愛に、涙してください。
西炯子先生が描く青春親子漫画『たーたん』のあらすじ
読めば読むほど感情移入してしまう『たーたん』の設定やあらすじをご紹介していきます。
著者の西炯子先生は2006年『STAY〜ああ今年の夏も何もなかったわ〜』や2012年『娚の一生 』にて榮倉奈々さん、豊川悦司さん主演で実写映画化。
2019年には『お父さん、チビがいなくなりました』が小林聖太郎監督によって実写映画化され、「初恋〜お父さん、チビがいなくなりました」というタイトルで公開されるなど、脚光を浴び続けている漫画家さんです。
今回ご紹介する『たーたん』も実写映画化間違いなしの、親子ヒューマンドラマとして期待大ですので要チェックですよ!
作品の設定や概要
- 著者:西炯子
- 出版社:小学館(ビッグコミックオリジナル、フラワーコミックスα)
- ジャンル:青年漫画、コメディ
- 巻数:3巻(連載中:2020年6月26日現在)
設定として、大学を卒業後、職を転々とし、失業保険の残りであるせっかくの5万円を使って、風俗で童貞を捨てようと意を決していた主人公に、警察署から一本の電話が。
その内容は、中学の同級生だった友人が殺人を犯し、その時に授かったとされる生まれたばかりの赤ん坊を代わりに育ててくれ、というものでした。
男手一つで手探りながらも、鈴を懸命に育てあげ、本当の娘のように愛情溢れる家庭でかわいい鈴と平和な毎日が送れると思っていました。
しかし15年後の今春、ついに刑期を終え、友人が出所する日が刻一刻と迫りつつありました。
鈴に本当のことを言わなければいけないと悩む敦と、何も知らない鈴のすれ違う思いを、あなたはどう受け止めるでしょうか…。
あらすじ
15年前、全く冴えない28歳の童貞男だった上田敦は、
友人から赤ん坊を預かる。その友人は殺人を犯し刑務所に入ったのだ。
赤ん坊の名は鈴。敦は鈴を娘として懸命に育てた。
鈴は父を「たーたん」と呼ぶ。
父は出生について娘に何も話していない。鈴は何も知らない。
ワケあり父娘の心ヒリヒリコメディ!
引用)コミックシーモア
巻が進む毎に様々な思いが交錯する『たーたん』の主な登場人物
複雑な事情を持った登場人物たちが、物語をより面白い展開へと発展させてくれる『たーたん』。
登場人物一人一人がキーマンとなり、ストーリーに欠かせない存在になっていく『たーたん』の主な登場人物をご紹介していきます。
上田 敦(うえだ あつし)
43歳。警察署からの一本の電話をきっかけに、童貞にして一児の父になる。
友人の子とはいえ、鈴を本当の娘のように思い、彼女を養う為15年運送業に勤め、職場内では1番の古株に。
人が良すぎるくらい優しかったり平和主義なところがあり、他の人の仕事を易々と手伝ってしまう為、周りに良いように扱われてしまうことも。
鈴に対して過保護な一面があり、鈴とはしばしば言い争いになることも。
鈴を置いて刑務所に送られた友人が、15年経った今年の春、ついに出所してくる。その前に鈴に本当のことを言わなければいけないと思いつつ、なかなか言い出せずにいる。
鈴(すず)
中学3年生の女の子。テニス部。幼少期「お父さん」がうまく言えず、敦のことを「たーたん」と呼び続けている。
敦が実の父親でないことを知らない。
葛木 征司(かつらぎ せいじ)
敦の中学からの同級生。鈴の実の父。
15年前殺人を犯し、当時まだ赤ん坊だった鈴を同級生の敦に託し、刑務所へ送られた。
妹尾(せのお)
敦の職場の女性事務員。真面目で他人に対して厳しい一面がある。
周りからのお願いを断れなかったり、人が良すぎる敦に対して終始イライラしているが、それは彼女の過去の出来事が起因していて…?
片岡 遥香(かたおか はるか)
敦が働く運送業屋でアルバイトを始めた21歳の女性。
職場の男性全員から好意を持たれるようあの手この手で男性達を翻弄するが、敦だけは何をしてもなびかないことに辟易していた。
川畑 克己(かわばた かつき)
鈴の同級生の男子生徒。小3からJリーグを目指していたが、部活で思うように結果が出せずサボるようになった。
鈴のことが気になる様子。
吉川 真紀(よしかわ)
鈴のクラスに転校してきた女子生徒。
両親が離婚して母親と東京に戻ってきたばかりで、クラスでいじめにあっていたところを鈴に助けられる。
酒癖や女癖が悪く、家に帰れば母や自分を殴る離婚した父がいた過去があり、男性に対していいイメージを持っていない。
井上(いのうえ)
敦の職場の後輩の男性社員。アルバイトの片岡のことが気になっている。
奥村 智絵(おくむら ともえ)
鈴の学校に産休で抜ける美術の先生の代わりに臨時で赴任した女性の先生。
無料試し読みだけじゃ伝わらない『たーたん』の3つの見どころ(ネタバレあり)
ほっこりだけじゃないちょっぴりスパイスの効いた人間ドラマが垣間見れる『たーたん』にはたくさんの見どころが存在します。
そんな数ある見どころの中でも、特に注目してほしいポイントを3つご紹介していきます。
敦と鈴それぞれの葛藤
まず『たーたん』では、敦と鈴がそれぞれ抱えている悩みに対して、2人なりの葛藤を繰り広げるところが見どころとなっています。
もうすぐ友人が出所してくることで「鈴に本当のことを言わなくてはいけないのか…。」とずっと悩んできた敦。
女性経験もなく、童貞のまま43歳まで鈴一筋で家計を支えてきました。だから友人が出所して鈴を迎えにきたら、鈴のいる幸せな生活がなくなってしまうんじゃないかという不安にかられるようになります。
そんなこととは梅雨知らず、今まで敦と共に生活してきて、母親の話を敦がほとんどしないことに疑問を持ち始めた鈴。
敦からは「母親は病気で死んでしまった。」とだけ聞かされていたがそれは嘘で、本当は母親はどこかで生きているんじゃないかという考えに至り、どうにか母親に会う手段はないかと模索し始めます。
そんな2人の噛み合わない葛藤は第三者視点の我々からしてみると、むず痒いことこの上ありません。
物語の行方がどんどん気になってしまう展開になっているので、是非一度お手に取ってご覧ください。
登場人物たちの抱えているもの
また『たーたん』では、敦の職場や鈴の通う学校に出てくる登場人物たちの抱えている悩みが、作品に深みを出していて見どころの一つとなっています。
敦と鈴を取り巻く登場人物たちは、それぞれ人に言えない、言いたくない深い悩みを持っています。その悩みが敦と鈴の関係性にどことなく関連付くかのような絶妙さを醸し出しているのです。
登場人物たちの裏の顔を知ってしまったら、もう感情移入しないわけにはいきません。
いろんな思いが複雑に絡み合い、ヒューマンドラマとも呼べるまでに人間味溢れる奥深い作品に仕上がっていますので、少し考えさせられる漫画が読みたいと思ったら『たーたん』を是非、ご一読ください。
父であり男であること
そして『たーたん』では、敦が父としての顔もありながら1人の男性としての顔も持っている、という複雑な心境に掻き立てられる場面も見どころの一つになっています。
43年間童貞のまま鈴を守るために必死に父親を演じることに徹していた敦。
しかし本音は、やはり童貞のまま年老いて人生終えてしまうのか、という悲観的な考えに頭を抱える場面もチラホラ。
そんな中、職場のアルバイトの片岡や社員の妹尾からのいきなりのアプローチに戸惑いを隠しきれない様子も。
イケメンでもなければ腹も出てきて、髪の毛も薄くなってきたTHE おっさんの自分が女性にとって魅力的なわけがないと、自分を卑下しながらも「上田さんには男性的な魅力ちゃんとありますよ!」と女性陣から間接的に言われてしまい困惑する敦。
果たして敦は、童貞を捨て大人の階段を登ることができるのか…。そんなところも一つ、今後のストーリーの楽しみに加えてみてはいかがでしょうか?
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最終回まで見逃せない『たーたん』はこんな人におすすめ
『たーたん』は、ほっこりなんだけど少し切ない家族の成長を楽しみたい人には特におすすめの作品になっています。
鈴と過ごした15年間、敦にとっては本当にかけがえのない日々なんだということを、物語を読み進めていると感じ取ることができます。
初めはいきなり赤ん坊を男手ひとつで育てるということに踏ん切りがつかず、ましてや女性経験もないということで、敦にとって鈴ははっきり言ってただの重荷でしかなかったようでした。
それでも、いきなり自分に赤ん坊を預けた友人を恨むでもなく、鈴を手元から離さなかった敦。ただの可哀想という情から、この子の成長を見届けたいという愛情に変わっていく様子は、涙なしに読み進めることはできません。
手塩にかけた可愛い娘が思春期や反抗期を迎え、お洒落や恋愛に目覚め始めたと知った敦の鈴に対する過保護さはまさに親そのものです。
鈴としても敦のことをうるさい父親だと煙たがりながらも、母親がいない分、敦が唯一の親であり、かけがえのない存在なんだということは子供ながらに感じているのでしょう。
随所に鈴の敦へのいたわりや家族愛的な心のよりどころを感じさせてくれる描写に、ここでも涙腺がうるっときてしまいます。
歯痒さの中に心がふわっと温かくなる、そんな作品になっていますので、気になる方は是非読んでみてください。
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紹介者が考える『たーたん』の伝えたいこと(考察)
『たーたん』は、親子とは何かということを伝えたいように感じます。
血は繋がっていないけれど、赤ん坊の時から鈴を大切に育ててきた敦にとって、鈴との日々はかけがえのないものになっていました。
一方の鈴も、敦のことを本当の父親だと思い込み、15年間母親のいない中、敦と2人で力を合わせて生活してきました。
そんな2人を見ていると、家族や親子って決して血が繋がっているというだけで成立するものでもないんじゃないか、と思えてなりません。血が繋がっていても家族や親子間で仲が悪かったり、縁を切られるなんてことも少なからずある中で、敦と鈴は血の繋がった親子以上にお互いを信頼し、認め合い、助け合ってきました。だからこそ強い絆で結ばれているんだろうなという気持ちを掻き立てられるんでしょうね。
本当の父親が出所したら、鈴を迎えに来ると知っている敦にとって、本当の自分の娘も同然に育てた鈴を簡単に引き渡したりはしないと思いたい。あわよくば、実の父が迎えになんてこなければいいのにな…と読者に思わせるほどに、敦の鈴に対するあふれんばかりの愛情には胸が締め付けられます。
実の父は本当に迎えに来るのか?敦は鈴に真実を話すのか?実の父が敦でないことを知った鈴は一体何を思うのか?詳細が分かっていない鈴の母親とは一体?気になる要素が満載のこの作品、結末を見ずに終われますか…いや、終われません。
2人がどんな未来を描いていくのか、最終話まで一緒に見届けましょう。
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『たーたん』の評価まとめと感想
最後に記事執筆者の評価と他の漫画サイトからの評価をまとめてみました。
漫画を購入するときのひとつの指標として、よかったら周りの評価も参考にしてみてください。
当サイトの評価 | 4.5(記事作成者の評価) |
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コミックシーモア | 4.0(43件の評価) |
まんが王国 | 3.7(6件の評価) |
Renta! | 4.2(128件の評価) |
BookLive | 4.4(20件の評価) |
めちゃコミック | 4.0(220件の評価) |
※それぞれ5段階評価となっています。
まさか全巻で涙するとは思わなかったほどに『たーたん』の世界観にどっぷりハマってしまいました。
家族っていいなと思わせてくれる心温まる作品なので、家族って何だろうと悩んでいる方に是非ご覧になっていただきたいです。
『たーたん』が気になる人におすすめの類似作品
ここでは『たーたん』に興味がある方におすすめの類似漫画をご紹介していきます。
1つ目の類似作品は『かろりのつやごと』です。
主人公の定食屋アルバイトを始めた大学生の青年と、そこのやってきたかろりというあだ名のぽっちゃり女性。ひょんな出会いから始まるほっこり胃袋系恋愛漫画です。
ヒロインのかろりは今まで男性経験がなく、いつか男性とあんなことやこんなことをしてみたいという妄想を日々楽しんでいました。異性と接する機会がほとんどないため、いざ話そうとするとドギマギしてしまったり、たじろいでしまったりするところが敦と似ているなと感じます。
恋愛にウブな姿にヤキモキしたい方は是非ご覧ください。
下の記事では『かろりのつやごと』の詳しい内容や無料で読む方法をご紹介しています。
2つ目の類似作品は『娘の友達』です。
主人公の晃介は仕事中心の生活に追われていた矢先、妻の死をきっかけとして、最期を看取れなかったがために娘とも仲は冷え切り、仕事にも辟易していました。そんなある日、娘の友達である古都とひょんなことから親しくなり、突然好意を持たれるようになります。
娘の友達、しかもまだ高校生に手を出すわけにはいかない…でも…。そんな、いけないと分かっているけど…みたいな葛藤が敦の身にも降りかかる場面が『たーたん』にも出てきます。そんな男性の悩ましい姿が晃介と重なる部分だなと思いました。
『たーたん』よりすこーし過激でシリアスな作品なので、背徳系のハラハラ感を味わいたい方にはおすすめの作品です。
下の記事では『娘の友達』の詳しい内容や無料で読む方法をご紹介しています。