『少年のアビス』漫画のネタバレ感想|深淵を覗く少年のドロッドロの令和心中愛憎劇
人生に希望を見出せなかった少年が、アイドルである女性と出会い、心中を決意するスーサイドラブストーリー漫画『少年のアビス』。
絶望の淵に漂う主人公の令児に心中を持ちかける美しくも危うげなヒロイン青江ナギに魅了され、令児の深淵、令児に関わる人たちの深淵に言葉を失う衝撃作品となっています。
峰浪りょう先生が描くガール・ミーツ・ガールの令和心中物語『少年のアビス』のあらすじや登場人物、見どころをネタバレや感想を含めてご紹介していきます。
『少年のアビス』を40秒紹介!
ネタバレなしで、サクッと作品の内容だけを知りたい方は以下の動画または紹介文だけ読んでください。
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「田舎町で一生を過ごすことに絶望していた少年が、アイドルの美少女に心中を持ちかけられて死のうとするドロッドロの令和心中ラブストーリー。」
深淵を覗いた少年の発端に、登場人物が自分の真っ暗なところを覗いて暴露していく展開になっているんですが、独身の教師や家族に抑圧された人の闇から目が離せません。
例えば教師であれば、卒業したら自分のことなんて忘れる生徒たちに、毎年毎年同じことを教えるのにうんざりしている気持ちなどが淡々と語られ、そんな暴露シーンに「うわっ」って思わされるんですが、心のどこかで闇を抱えているのは自分だけじゃなかったんだっていう安心感が芽生えるから、もっと闇を見たくなっちゃうんです。
しかも田舎町の人間関係がドロッドロすぎてマジで気持ち悪くて、特に主人公のお母さんの秘密に言葉を失いました。
闇深作品ですが、抑圧された気持ちを抱えている方はハマると思うので、ぜひご覧ください。
また『少年のアビス』は、マンガアプリ「ヤンジャン!」で連載されています!
(※期間によっては配信が終了している可能性もございます。)
峰浪りょう先生の新作『少年のアビス』のあらすじ
「ヒメゴト〜十九歳の制服〜」や「初恋ゾンビ」などの名作を世に放った峰浪りょう先生の新作漫画『少年のアビス』の設定やあらすじをご紹介していきます。
儚くてダークだけど、美しくて芸術的な峰浪りょう先生の世界にどっぷりと浸かってください。
作品の設定や概要
- 著者:峰浪りょう(峰浪りょう先生のTwitterアカウントはこちら)
- 出版社:集英社(ヤンジャン!)
- ジャンル:ヒューマンドラマ、ラブストーリー
- 話数:4巻(連載中:2021年3月18日現在)
主人公たちが暮らす町は、「春の棺」という小説の舞台となっていて小説では以下のように内容が書かれています。
その町の神月川の上流の情死ヶ淵では江戸時代にすごい美人で村の男がみんな彼女に恋をしてしまうような旅人の女性がいて、その女性が村の中の一人の男性と相思相愛になる。
しかし、村人たちは嫉妬して二人の恋を邪魔するようになり、村を出ることも結婚することも許さず、結局二人は嵐の夜に川に身を投げて心中したという。
そんな心中の舞台となった町で、主人公の令児がアイドルの青江ナギと出会い、心中を決意するストーリーになっています。
また、タイトルにある「アビス」は「深淵」という意味があります。
あらすじ
何もない町、変わるはずもない日々の中で、高校生の黒瀬令児は、“ただ”生きていた。
家族、将来の夢、幼馴染。そのどれもが彼をこの町に縛り付けている。
このまま“ただ”生きていく、そう思っていた。彼女に出会うまでは――。
生きることに希望はあるのか。この先に光はあるのか。
“今”を映し出すワールドエンド・ボーイミーツガール、開幕――!!
引用)となりのヤングジャンプ
また『少年のアビス』を連載しているアプリ「ヤンジャン!」では、ヤンジャン最新号が最速で読めます!
狂人が多すぎる『少年のアビス』の主な登場人物
『少年のアビス』では、小さな町に暮らす心に闇を抱えた登場人物たちがたくさん登場します。
そんな闇を抱えて狂人のように思えながらも、人間らしくもある登場人物たちをまとめてご紹介していきます。
黒瀬令児(くろせ れいじ)
母と兄と祖母と4人暮らしをしている主人公の少年。
兄は引きこもりで、祖母は認知症。働きながら家族を養っている母親を楽させたくて高校を卒業したら働こうと考えている。
しかし、幼なじみの峰岸にはパシリのように扱われていて、町に縛られての人生に希望も何もなかった。
そんなときコンビニでアイドルの青江ナギに出会い、心中を持ちかけられることに。
それからは自分の気持ちを溢れ出させていき、どんな方法でも自分のことを助けてくれる人を求め続けるようになる。
青江ナギ
「アクリル」というアイドルグループに所属していて、その中でも特に美人な二十歳の女性。
なぜか令児のいる町でコンビニのバイト店員として登場し、コンビニで出会った令児には興味を持ち、そして令児のことを気づいてあげる。
さらに情死ヶ淵の心中の話を一番幸せな死に方で羨ましいと思っていて、出会ったばかりの令児に心中しようと持ちかける。
またアイドルであるにも関わらず、旦那がいて、さらに令児とも関係を持つ。
実は真面目な一面もあり、周りからは頭が固いとよく言われている。
チャコ:朔子(さくこ)
頭がいいから県1の私立の女子高に通っていて、好きなことも多くていつも楽しそうにしている令児の小学校からの友達の女の子。
峰岸にいじめられているのを令児に助けられたことがあり、峰岸にパシリのように使われるようになった令児には借りを返すためにお金を渡すこともある。
また令児のことをよく見ていて、令児の変化にはすぐに気がつく。
そして、自分の住む町を何もないところだと思っていて、心底嫌っている。
そのため町を出ることを望んでいて、都会の出版社に就職して、好きな作家の似非森浩作を担当することが夢。
柴ちゃん
生徒から柴ちゃんと呼ばれている令児の担任の先生。元国体卓球選手でもある29歳の女性。
心中しようとしている令児を発見し、自分のクラスから自殺者を出さないために止めるが、自分しか頼る人がいない令児に暴走して…。
令児を町から出して助けるという使命感に燃えるようになる。
似非森浩作(えせもり こうさく):野添(のぞえ)
46歳の作家。青江ナギの夫。「春の棺」という「情死ヶ淵」を舞台にした心中の話を書いている。
令児の母親とは中学の時の同級生でもある。
離婚を何度もしていて、女優と不倫していたことでも話題となり、一緒に薬物使用してた恋人をオーバードーズで亡くしているクズであるため、リアルで出会っちゃダメな人。
中学1年生のときから、この町に住んでいた過去があり、現在は親の介護で戻ってきてる。
峰岸玄(みねぎし げん)
令児をパシリのように扱っている幼なじみ。町の中でも王様のような存在。
家は町の土建屋。
黒瀬夕子(くろせ ゆうこ)
令児の母親。看護師として働きながら家族を支えている。
自身の母親の介護と令児の兄に怒鳴られる毎日を過ごしていて、楽になるために早く令児に働いて欲しいと思っている。
令児のことは、心配する様子もなく毎日に困憊している。
令児の兄
令児の兄。受験に失敗してからおかしくなり、引きこもるようになる。
コンビニの唐揚げのストックがないと家を壊す勢いで壁を殴って、母に怒鳴り続ける。
令児の祖母
令児の認知症の祖母。デイサービスの日はテンションが上がってうるさくなる。
認知症になる前は令児のことを嫌っていた。
人の狂気が面白い『少年のアビス』の3つの見どころ(ネタバレあり)
登場人物たちの狂気が描かれ、読み進めるほどに衝撃を受ける『少年のアビス』には、面白い見どころがたくさん存在します。
そんな数ある見どころの中でも特に注目してほしいポイントを3つに絞ってご紹介します。
深淵に立つ令児
『少年のアビス』では、町に閉じ込められて深淵を漂う主人公の令児が見どころとなっています。
引きこもりの兄、認知症の祖母、2人の世話に困憊の母と暮らす令児は、母親を助けるためにも小さな町の中で仕事をして一生を過ごすという選択しかないと思っています。
さらに、その小さな町では、町の王となる幼なじみにパシリのように使われていて、未来に希望を持てない状況に陥っているのです。
しかし、令児はアイドルの青江ナギと出会って「心中しようか」と誘われたことで、死を決意し、そして死の意識によって現実から解放される希望に満たされていきます。
死を考えて深淵に近づくことで自分の心が露わになり、歯止めも効かなくなり、自分を助けてくれる人を求める令児の姿は狂気さを感じながらも、家族のために自分を犠牲にしてきた少年の切なさに胸を打たれます。
将来に希望もなく思い詰めて深淵に立つ少年が、同じく深淵に近い者たちと関わり合うことでどのような結末を迎えるのか、ぜひ見届けてもらいたいです。
ミステリアスな青江ナギ
また令児と出会ったアイドルの青江ナギの存在も見どころとなっています。
アイドルのはずなのに辺鄙な町のコンビニでバイトをしていて、さらに夫もいるのに、令児と関係を持ってしまうヒロインの青江ナギ。
人の心の中を見透かし、出会ったばかりの令児に心中を持ちかける青江ナギはどうして死にたがるのか…?
偶像であるアイドルとして生きながらも、生きている理由がないと語る彼女の深淵は…?
ミステリアスさに満ち溢れ、美しくもどこか危うげな青江ナギには不思議と惹きつけられて目が離せなくなってしまうでしょう。
青江ナギという存在に魅了されながら、謎多き彼女の言動のすべてに注目してみてください。
町に閉じ込められている登場人物たちの深淵
そして『少年のアビス』では、町に閉じ込められて闇を抱えた登場人物たちが令児に関わってくるので、彼らの深淵にも目が離せません。
心中する令児を助けた教師も、毎年毎年同じことを教えて、生徒からも舐められる教師という仕事に達成感も何もなく、独り身で暮らすことに嫌気が指している自分の真っ暗なところを露わにします。
さらに令児に執着し、令児に意味深な言葉を投げかける峰岸にも闇を感じ、令児の友達の深淵に近づく光景も描かれ、ひたすらゾクゾクッとした衝撃を与えられます。
まるで、自分の深淵までも覗いているかのように…。
日々の不満を溜め込み、逃げ場のない町に住み続ける登場人物たちの心の闇が溢れ出てくる様はまさに「深淵」であり、町全体が「深淵」となっているかのように感じれるのです。
登場人物全員が狂人のように思えるけど、それが究極の人間らしさを放っている。そんな危うさ満載のキャラクターたちに真っ暗なところを覗いてみませんか?
結末まで見逃せない『少年のアビス』はこんな人におすすめ
『少年のアビス』は、誰しもが抱えるような人間の真っ暗な部分を見たい方にはおすすめの作品です。
物語は、町に閉じ込められて希望もない主人公の令児が、町にやってきたミステリアスなアイドルの青江ナギと出会い、心中を決意するボーイ・ミーツ・ガールの令和心中ストーリーとなっています。
死を目前に控えて深淵に佇む令児に関わる登場人物たちも自分たちの深淵を覗き込み、どんどん人が心の中で抱いている暗い部分が露わになる姿が描かれています。
ダークすぎる物語が広がっていますが、登場人物たちの心情は多くの方が理解できるのではないでしょうか。
普段隠しているだけで、心の奥底に眠る暗い感情を湧き出させられるような衝撃的な作品ですので、心が病んでいる人ほど読んでみて欲しいと思いました。
ドロッドロの愛憎劇が繰り広げられて、闇を抱えているのは自分だけじゃないと思えるダークだけど儚く美しい『少年のアビス』をぜひ結末までご覧になってみてください。
紹介者が考える『少年のアビス』の伝えたいこと(考察)
この作品を読んで真っ先に頭に浮かんのが、ソクラテスの「肉体は魂の牢獄」という考えです。
自分の人生に希望を持てない令児が死を決意した途端、何も望まなくて済むことで気持ちが楽になる光景を見て、まさに魂が肉体から解放されることを望んでいるかのように見えました。
さらに令児たちの住む町を肉体(牢獄)として表し、町に縛られる登場人物たちのそこから解放されずに苦しむ姿を描いているようにも個人的には感じられました。
そして「令児くんの人生は令児くんのものだよ」というセリフが印象的で、生きている限り家族や友達など周りの人間に少なからず縛られますが、我慢しすぎずに自分のためだけに行動することも大切だということを伝えたいように思えます。
『少年のアビス』は考えさせられることが多く、人によって感じ方も違ってくると思うので、ぜひ実際にご覧になって自分の価値観に合わせて作品を読み解いてみてください。
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『少年のアビス』の評価まとめと感想
最後に記事執筆者の評価と他の漫画サイトからの評価をまとめてみました。
漫画を購入するときのひとつの指標として、よかったら周りの評価も参考にしてみてください。
当サイトの評価 | 4.5(記事作成者の評価) |
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コミックシーモア | 4.3(14件の評価) |
まんが王国 | 4.8(5件の評価) |
Renta! | 4.0(21件の評価) |
BookLive | 4.8(17件の評価) |
めちゃコミック | 3.9(42件の評価) |
※それぞれ5段階評価となっています。
セリフと描写の1つ1つの破壊力が抜群で、読み進めるほどに雷に打たれたような衝撃を受ける作品です。
そして、あまりにも人のダークな面を描いているのに、どこか芸術的で妙に惹かれてしまうのが本当にすごいと思いました。
読むほどに作品の深淵に沈み込みますし、登場人物たちの心情を見て、自分の心の奥の暗い感情まで覗いてしまうかもしれません。
人の心の闇を覗く勇気のある方は『少年のアビス』をぜひご覧になってみてください。
『少年のアビス』が気になる人におすすめの類似作品
ここでは『少年のアビス』に興味がある方におすすめの人の奥底の感情に迫るダークな漫画をご紹介していきます。
1つ目は『センコウガール』です。
いじめ、毒親、自己否定などセンシティブな重たいテーマを扱い、「女の子」の呪縛を解き放ったガール・ミーツ・ガールミステリー漫画となっています。
クラスメイトの死と同時に煌めく姿で登場した主人公の美少女・民子。そんな民子が「死にたい」とつぶやくクラスメイトたちに襲いかかるという衝撃の冒頭から、結末に進むにつれ明らかになる民子の真意に涙なしでは読めない名作です。
「少年のアビス」と同じく、登場人物たちの苦しすぎる思いに共感し、切なすぎる真実に驚愕する物語ですので、ぜひ合わせてご覧になってみてください。
下の記事では『センコウガール』の詳しい内容や無料で読む方法をご紹介しています。
2つ目は『なれの果ての僕ら』です。
仲良しのクラスメイトが閉じ込められ、極限状態で「善悪」が試される実験を行うことになった禁断のサスペンス漫画となっています。
クラスメイトが命の危機に瀕した時だからこそ露わになっていく感情や善性が欲望に屈服して憎悪が広がっていく光景を見て、自分の中の大切な「何か」が崩壊していくような感覚に陥ります。
「少年のアビス」と同じく人間の心の内に眠る暗い部分が表現されているので、興味のある方は合わせてご覧ください。
下の記事では『なれの果ての僕ら』の詳しい内容や無料で読む方法をご紹介しています。