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『夏の魔物』漫画のネタバレ感想|両性具有の少年少女が紡ぐ刹那系漫画

夏の魔物

『夏の魔物』漫画のネタバレ感想|両性具有の少年少女が紡ぐ刹那系漫画

 

オメガバースの常識を覆す問題作『夏の魔物』。

切なさと、もどかしさと、欲望と…読者にいろんな感情を抱かせにくる『夏の魔物』のあらすじや登場人物、見どころをネタバレや感想を含めてご紹介していきます。

 

ノムラララ先生が描くオメガバース漫画『夏の魔物』のあらすじ

夏の魔物の雄晴に惹かれる理由が気になって空き教室に読んで問い詰める陽菜子出典:「夏の魔物」、著者:ノムラララ、出版社:双葉社

少しややこしい設定ではあるものの、気付いたらページをめくる手が止まらなくなっているほどに中毒性の高い作品である『夏の魔物』。

読めば読むほどその世界観の虜になってしまう『夏の魔物』の設定やあらすじをご紹介していきます。

作品の設定や概要

 

今回ご紹介したい『夏の魔物』は、オメガバースというあまり聞き慣れない題材を取り扱った作品になっています。オメガバースってなんぞ?という方に、どんな設定のものなのかを軽くご説明させていただきます。

この前情報を知っているか知らないかで、作品の入り込み具合が格段に違ってくるはずですよ!

オメガバースとは、男女という性の他に「オメガ性」の男女「ベータ性」の男女「アルファ性」の男女という計6種類の性別を持った人間(両性具有)が存在するという設定のSF感満載の世界観や、その世界観を題材にした作品の総称のことを言います。

多くはBL漫画でよく使われる設定で、「男性が妊娠できる」といったものが代表的な特徴です。北米の二次創作ファンが考えた設定と言われており、日本に伝わるのと同時に界隈の間で爆発的人気になったという話があります。

「オメガ性」「ベータ性」「アルファ性」にはざっくりとした性質や階級というものがあります。元々は狼の群れに実際に存在する階級意識参考にしたという説もあるんだとか。

「オメガ性」…アルファ性の人口比率が10%〜20%なのに対しそれよりもさらに数が少ない。

「ヒート」と呼ばれる発情期が3ヶ月に1回の頻度で起こり、1週間ほど強いフェロモンを発する。そのフェロモンは特にアルファ性を強く惹きつける。

発情期の1週間は手近なアルファ性やベータ性に見境なく欲情してしまい、発情と繁殖以外何もできなくなるくらい脱力感や性欲の増進に悩まされるため、抑制剤で症状を抑える人が多い。

「ベータ性」…中間層で数が一番多い。身体的な特徴や行動等も一般的な普通の人間と変わらず、発情期もない。

ベータ性同士の子供は高確率でベータ性だが、幼少期はベータ性だった人が歳を重ねたらアルファ性やオメガ性の体質になるという突然変異が起こる場合もある。

「アルファ性」…人口の10%〜20%しかおらず、身体機能や知能が高くなりやすいエリート体質が多い。

基本的には総攻めの描写が多く、特にオメガ性に対しては絶対的な攻め手になる。

基本的には強引で支配的なイメージが強いが、それゆえの苦悩というものも抱えやすく、時に傷つきやすい性格でもある。

発情期のオメガ性に遭遇してしまうと、どんな理性に理性的なアルファ性であっても、抗いきれない強烈な発情状態に陥ってしまう。

 

今回ご紹介する『夏の魔物』はBL漫画特有の設定を、オメガ性の男の子とアルファ性の女の子を題材としていて、NL(ノーマルラブ)のようでいて少し雰囲気の違う真新しいオメガバースラブストーリーになっています。

あらすじ

村田くんのことが ずっと大好きだったのに。この気持ちは、恋じゃないの?

――別クラスの佐藤さんに告白された、オメガの村田くん。けれど、そんな佐藤さんが村田くんに迫っていく様子は、完全にアルファのもので…。

オメガバースの世界を通しながら、みずみずしい筆致で描かれる「男女の切実な恋心と欲情」に、思わずあなたも引き込まれてしまうはず。

引用)コミックシーモア



2人っきりの世界観『夏の魔物』の主な登場人物

メインの登場人物がほとんど雄晴と陽菜子だけというシンプルな設定で物語が進んでいく『夏の魔物』。

たった2人だけの世界を覗き見しているかのような背徳感と、甘酸っぱい青春の風が吹き抜けるような爽やかさに心がグッと引き込まれてしまう『夏の魔物』の主な登場人物をご紹介していきます。

村田 雄晴(ゆうせい)

オメガ性の両性具有の男の子。どこか淡白で感情の起伏があまりなさそうではあるが、陽菜子の存在を知ってから、徐々にオメガ性らしからぬ性格が浮き彫りになっていき…?

佐藤 陽菜子(さとう ひなこ)

アルファ性の両性具有の女の子。学校ではクラスの違う雄晴のことが気になっており、直鉄接したことはなかったけれどもいつも目で追っていたという。

その原因が恋愛感情ではなく、オメガ性である雄晴から発せられるフェロモンによる発情状態に起因するものだったのかもしれないことに対して複雑な気持ちを抱いている。



面白い!『夏の魔物』の3つの見どころ(ネタバレあり)

夏の魔物の陽菜子が雄晴にこの気持ちが恋なのかそうじゃないのか言及するシーン出典:「夏の魔物」、著者:ノムラララ、出版社:双葉社

少年少女のオメガバースというだけでも十分すぎるくらい魅力あふれる『夏の魔物』には、それはもうたくさんの見所が存在します。

そんな数ある見どころの中でも、特に注目して欲しいポイントを3つご紹介していきます。

極限まで無駄の省かれた世界観

まず『夏の魔物』では、無駄なものが一切描かれていないシンプルな世界観が見どころとなっています。

今回ご紹介する『夏の魔物』は、そのグラフィックやキャラクターデザイン、コマ使いからセリフ、登場人物に至るまで、とことん無駄を省いたかのようなシンプルさが印象的な作品です。

でも、ただシンプルなだけじゃないのがこの作品の凄いところ。

シンプルだからこそ無駄な情報が一切ないので、作品の進行を邪魔するものがなくスッとストーリーが入ってくるんです。

それでいて、登場人物の表情の微妙な変化や息遣いが、まるですぐそばまで感じ取れるかのような妙なリアル感があり、ページをめくる手にも自然と熱がこもります。

こんな不思議な気持ちになる作品は久しぶりだなと思えるくらい、その主張のない作品から溢れ出る異様な世界観に、ぜひあなたも浸ってみてはいかがでしょうか。

陽菜子の揺れ動く感情

また『夏の魔物』では、雄晴に対する気持ちが恋なのか、欲情なのかに困惑する揺れ動く感情も見どころの一つになっています。

オメガ性である雄晴から発せられるフェロモンは、薬で抑制していたとしてもアルファ性である陽菜子にとっては、狂気的なまでに甘美で魅惑的なものなのでしょう。

つい自分の欲情を抑えきれなくなり、一方的にほぼ初対面である雄晴を空き教室に呼び出し、欲望のままに押し倒してしまいます。

弱々しい声で泣きながら放った「村田くんが好き」という言葉が本心からくるものなのか分からないながらも、自分の気持ちを確かめるかのように雄晴と初めての行為に挑もうとする陽菜子の表情が、なんだかとても切なくて、それでいて愛おしいんです。

そんな陽菜子の気持ちを知ってかしらずか、本気とも悪戯とも取れる態度で陽菜子に接する雄晴。彼が陽菜子に対してどんな感情を抱いているのか。それは、物語を読み進めていかないと分からない部分ではあります。

2人がどんな結末を繰り広げてくれるのか、今から楽しみでしょうがないです。

雄晴と陽菜子の微妙な距離感

そして『夏の魔物』では雄晴と陽菜子のぎこちない距離感も見どころの一つになっています。

オメガバースの世界観の中では希少価値の高いオメガ性とアルファ性である2人。出会うべくして出会ったかのような、まるで引き寄せられるかのように同じ空間に存在している相手。そんな相手と、お互いどう接するべきなのか探りながらも、思春期の欲望をお互いに確かめ合うように求め合うシーンが非常に印象的なこの作品。

好きな相手と初めてを経験する時のあの恥ずかしさの中にあるドキドキ感とちょっとの不安。そんな複雑な感情が2人の表情や態度から見え隠れする姿を見ていると、読んでいるこっちまでムズムズしてきてしまいます。

思春期の、尚且つ男女の体をまだ知らない雄晴と陽菜子がそういった行為をするだけでもなんだか儚くて青くて可愛らしいのですが、オメガバースという数奇な設定がこの2人のそういったシーンをあたかも神聖なものを見ているような気にさせるスパイスになってくれています。

お互い多くは語らないが、素直に自分の気持ちを伝えようとする陽菜子と、ちょっとスカした態度を取りながらも陽菜子との関係を取り繕う雄晴のぎこちないやりとりが、青春の甘酸っぱさをより鮮明に引き立ててくれていて、たまらなく心を締め付けてきます。

この良さは、読んだ人にしか絶対分からないので、少しでも気になったなという方は試し読みだけでもしてみてください。試し読みだけでは済まなくなりますよ…。

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最終話まで見逃せない『夏の魔物』はこんな人におすすめ

『夏の魔物』はちょっと変わった設定のNL漫画が好きな人には特におすすめの作品になっています。

オメガバースというだけで、一癖も二癖もありそうなイメージを持たれるかもしれませんが、決してそんなことはありません。ただ、やはり普通の男女が行うそういった行為とは若干違うというところがこの作品の面白いところです。

攻めに転じていた陽菜子が、ある時は普通の女の子のように受けに転身したり、雄晴もその逆があったりと両性具有ならではの「シーンに応じて物理的な攻めと受けが逆転する」という特異な世界観が、なんとも癖になってしまいます。

可愛くてか弱い陽菜子が雄晴に「入れたい」と攻めに入るシーンや、Sっけのありそうな態度を取りながらもそんな陽菜子に流されるまま余裕のない表情を見せる雄晴が垣間見れるシーン。どれをとっても尊いの一言に尽きます。

ボキャブラリーが貧困になるくらい、感情をグワっと引き込まれてしまう秀逸な作品になっていますので、気になる方はぜひお手にとって見てください。

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紹介者が考える『夏の魔物』の伝えたいこと(考察)

夏の魔物の欲望に負けた自分を反省し普通の学生らしい恋愛をしたいと打ち明ける陽奈子出典:「夏の魔物」、著者:ノムラララ、出版社:双葉社

『夏の魔物』は若い時に芽生えた恋心と欲望には素直になってみてもいいんだということを伝えたいように感じます。

学生の、特に中高生の恋愛って手のつなぎ方すら探り探りで、相手に嫌われないようにとか頑張ってもっと好きになってもらおうとか、いちいち気にしながらも全力で恋愛している姿がいいですよね。

そんな思春期真っ只中の恋愛ですから、もちろん好きな相手とのそういった行為に興味津々なのも当たり前です。それを恋心ではなく、ただ性欲処理をしたいがためにこの人と付き合ってるんじゃないかなんて悩みは持たなくていいんだよ、というメッセージを私は勝手に受け取りました。(この記事の筆者は、もうそんなそんな悩みすら持たないほどに擦れてしまいましたが。笑)

大人ですらいろんな葛藤がある中で恋愛しているんだから、学生の恋愛なんてもっといろんなことに悩みながら少しずつ相手を理解していくものなんだろうな…と、この作品を読んでいて改めて感じたことでもあります。

そんなちょっとセンチメンタルな気分に浸らせてくれる『夏の魔物』を、ぜひチェックしてみてください!

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『夏の魔物』の評価まとめと感想

最後に記事執筆者の評価と他の漫画サイトからの評価をまとめてみました。

漫画を購入するときのひとつの指標として、よかったら周りの評価も参考にしてみてください。

個人の評価4.5(記事作成者の評価)
コミックシーモア4.5(143件の評価)
まんが王国
Renta!4.4(23件の評価)
BookLive5.0(5件の評価)
めちゃコミック4.5(141件の評価)

※それぞれ5段階評価となっています。

うしのひと
うしのひと

この作品、正直アツイです。「純情?劣情?」このキャッチコピーがまた上手い具合に作品の魅力を読者に煽り倒してきます。

読者の心を無条件で鷲掴みにしてくる、独特の世界観に思わず脱帽です。

多くは言いません、まず読んでください。話はそれからです。



『夏の魔物』が気になる人におすすめの類似作品

ここでは『夏の魔物』に興味がある方におすすめの漫画をご紹介していきます。

1つ目は『みにあまる彼氏』です。

主人公であるヒロインのいろはは、恋愛経験一切なしの超純粋な女の子。ある日ひょんなことがきっかけでいろはが付き合い始めたのは、恋愛経験豊富すぎる日下部。そんな彼の言動にいちいち困惑するいろはが可愛すぎる学園ラブコメ漫画です。

恋愛経験がない中でも、恋愛って何だろうって葛藤しながらも、日下部に心惹かれていくいろはの様子が陽菜子と似た何かを感じます。『夏の魔物』とは打って変わってコメディ要素満載のストーリー展開なので、クスリと笑えて面白い恋愛漫画が好きな方におすすめの漫画です。

下の記事では『みにあまる彼氏』の詳しい内容や無料で読む方法をご紹介しています。

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2つ目は『先生、あたし誰にも言いません』です。

特別何もいいことがない人生に辟易していた女子高校の担任教師であるキヨは、担当クラスの隠キャの女子生徒の依原とひょんなことから関係を持ってしまう、ほんのりシリアス学園恋愛漫画です。

恋愛が何なのか分からないまま大人になってしまった2人が、いろんな思いと葛藤しながらもお互いを求め合う姿が、雄晴と陽菜子の姿と重なる部分だと思います。

下の記事では『先生、あたし誰にも言いません』の詳しい内容や無料で読む方法をご紹介しています。

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