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押見修造の『血の轍』|毒親と息子の歪な関係を描いた漫画のネタバレ感想

血の轍

押見修造の『血の轍』|毒親と息子の歪な関係を描いた漫画のネタバレ感想

 

「惡の華」「ぼくは麻理のなか」などの傑作を世に生み出し続けている押見修造先生が描いた毒親をテーマにした『血の轍』。

こだわり抜かれた描写やストーリー構成、共感の声が多い母親の過剰な愛情に、それに支配される息子の感情がリアルに表現され、大反響を呼んでいる漫画となっています。

そんな狂気の毒親の息子支配が恐ろしすぎる『血の轍』のあらすじや登場人物、そして見どころをネタバレと感想を含めてご紹介していきます。

 

押見修造が毒親を描いた『血の轍』のあらすじ

血の轍の静子と静一出典:「血の轍」、著者:押見修造、出版社:小学館

鬼才である押見修造先生が毒親をリアルに描いた『血の轍』の作品概要やあらすじをはじめにご紹介していきます。

作画から構成までこだわり抜かれた読者を釘付けにする漫画となっています。

作品の設定や概要

  • 著者:押見修造
  • 出版社:小学館(ビッグコミックスペリオール)
  • ジャンル:ミステリー、ホラー
  • 巻数:10巻(連載中:2021年1月29日現在)

 

『血の轍』は、「惡の華」「ハピネス」「ぼくは麻理のなか」「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」などの名作を世に生み出し続けている押見修造先生が毒親について描いた作品です。

客観的な世界ではなく、「主人公の静一の目を通した世界」を演出するために、アナログの手書きにこだわり、静一の感情とともに人の表情や風景が変化します。

そんなこだわり抜かれた『血の轍』は、読者からの共感や恐怖の声で話題沸騰となっています。

あらすじ

母親の静子の愛情を一身に受け育ってきた中学2年生の長部静一。

毎週、甥のしげると遊びながら平和な日常を過ごしていた。しかし、ある夏の日、親戚といった山のレジャーで穏やかな家庭は激変する。

母親の強すぎる愛情、支配に静一の精神が侵されていく…。



表情で語る『血の轍』の主な登場人物

『血の轍』では多くの言葉を語りませんが、登場人物の表情の変化がはげしくなっています。そのため、表情から感情を推測するのが楽しみの1つとなっているのです。

そんな表情で物語る登場人物たちをご紹介していきます。

長部静一(おさべ せいいち)

中学2年生。母親や親戚からは「静ちゃん」と呼ばれている。母親から溺愛されている。静一自身、母親のことを変な風に言われるのをひどく嫌う。

母親の優しい強要に侵され続け、自分の気持ちを素直に表現することができないでいる。しげるの事故後は、母親の影響でどもる癖がつく。

長部静子(おさべ しずこ)

静一の母親。息子の静一を溺愛するあまり毎日幼稚園で教室の後ろで立っていたり、友達と遊びに行かせなかったり、なにかと静一をべたべたと触ったりと過保護な行動をとる。過保護になったのは過去に自分が親から愛されず「いらない子」だと思われていたことが原因と考えられる。

また、甥のしげるを崖から突き落としたり、静一がもらったラブレターをビリビリに破り捨てたり、静一の首を絞めたりなど制御不能な危険な状態に陥る。

夫が自分よりも親戚のことにかまったり、親戚からは過保護と馬鹿にされたりすることを嫌がっている。

吹石由依子(ふきいし ゆいこ)

静一のクラスメイトの女の子。静一のことが好きで人生で初めてラブレターを渡す。

家庭では父親に暴力を振るわれることがあったり、離婚していて母親がいなかったりと大変な境遇にいる。しかし、たくましい性格で静子に怯えながらも静一のことを守ろうとする。

しげる

静子の甥にあたる人物。毎週、静一の家に来て、静一とゲームなどをして遊んでいる。静一の母親のことを過保護だとからかうこともある。

親戚で山のレジャーに行ったときに山から転落し、重症を負う。



結末が予測できない『血の轍』の見どころ3選(ネタバレあり)

血の轍の「死んでいい」と静一に聞く静子出典:「血の轍」、著者:押見修造、出版社:小学館

『血の轍』は物語の構成や登場人物の表情、風景描写から不気味な恐怖感がひしひしと伝わってくる作品になっています。そして毒親である静子の行動や息子の静一の感情など目が離せないシーンが目白押しです。

恐ろしすぎる毒親と息子がどんな結末を迎えるのか全く予測できない『血の轍』の特に注目してほしい場面を3つ厳選してお伝えします。

過保護が過ぎる毒親

『血の轍』の見どころはなんといっても毒親である静子の行動です。自身が親に愛されなかった過去から過剰なまでの歪んだ愛情を息子に植え付け、縛り付ける恐怖感がとてもリアルに感じられます。

幼稚園では毎日教室の後ろで静一を見守ったり、友達と遊ばせないために甥を毎週家に呼んだり、静一がもらったラブレターを破いたり、息子とキスしたりと、一部では母親なら共感できるようなこともあるかと思いますが、過保護する異常な行動は読んでいて心臓が震えます。

そして読み続けていると静子のすべてが演技のように感じられ、優しい強要に思わず読者自身も息が詰まってしまうかと思われます。

毒親に侵される静一

そして毒親である静子のイビツな優しい強要に侵され続ける静一も注目してもらいたいです。

おかしくなる母親を守らなければと思う反面、母親の強要に抗うことができず、自分の気持ちを言葉にできないで支配されていく静一を見ていると親の影響力の恐ろしさを実感できます。

また静一の視界とリンクしている風景描写により、静一の心の揺れが読者も体験できるため、より臨場感のある気持ちを共有できるのです。

毒親に侵され続けて精神が揺れ動く静一と、その感情に伴う風景描写も見どころとなっています。

多くを語らない表情描写

『血の轍』は言葉によって語られる部分が非常に少なく、主人公の静一の視界とリンクした風景描写や登場人物の表情描写から感情を読み取る作品になっています。

静一の感情によって人々の表情も綺麗に見えたり、歪んでおぞましく見えたりと変化するのです。

多くを語らない構成のため、表情などから読者自身が静一の感情を思い描きリンクし、心の多く深くまで恐怖を感じることができます。

美しい顔から悪魔のような顔に変わったりする静一の目線から見る表情には注目必須です。

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毒親が怖すぎる『血の轍』はこんな人におすすめ

『血の轍』は全国の母親や息子さんには是非読んでもらいたいおすすめの作品です。

『血の轍』を読んだ女性の多くは毒親の気持ちに共感できる方が多くいらっしゃるそうです。毒親に犯され自分を殺していく息子の姿が共感できる形で描かれているため、この漫画を読めば多くの母親が知らず知らずに毒親になってしまうことを防げるかもしれません。

また息子さんの場合も自身の母親に逆らうことの必要性や周りと違う過保護さに気づくきっかけになるかと思います。

母親、息子ともに共感できる内容が多く、客観的に自分の親子関係を見つめる良い機会にもなると思うので、是非ご覧になってみてください。

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管理人の思う『血の轍』が伝えたいこと(考察)

血の轍の吹石の手紙を拒絶する静子出典:「血の轍」、著者:押見修造、出版社:小学館

『血の轍』は、過保護すぎる息子愛の危険性を伝えたいように感じられます。

母親の静子の過剰すぎる愛情が、犯罪を起こさせたり、ラブレターをビリビリに破いたり、息子を支配するようになります。そして息子の静一の本当の気持ちを押し殺し、支配していくのです。

これは漫画だけでなく現実世界でもよくある話だと思います。自分の子どもを危険な目に合わせないため進路を強要したり、交際相手を否定したり、自由を奪う愛情表現は実際に多く存在します。子どもを想う気持ちであるのはわかりますが、そういった過保護さが子どもに圧迫感を与えて自由を奪っていることもあるのです。

『血の轍』ではそういった親子関係を見つめて勉強することができると感じます。そして、ストーリー構成も読者の感情を激しく揺さぶる素晴らしいものになっているので、是非多くの方にご覧になってもらいたい漫画となっています。

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『血の轍』の評価まとめと感想

最後に記事執筆者の評価と他の漫画サイトからの評価をまとめてみました。

漫画を購入するときのひとつの指標として、よかったら周りの評価も参考にしてみてください。

当サイトの評価4.6(記事作成者の評価)
コミックシーモア3.9(106件の評価)
まんが王国3.8(155件の評価)
Renta!3.9(394件の評価)
BookLive4.2(70件の評価)

※それぞれ5段階評価となっています。

これまでも見どころなどで詳しく紹介していきましたが、毒親と息子の歪な関係が見事に表現されていて、ページをめくるたびに驚きを与えるような演出もあり、衝撃を受けた作品でしたので、高評価をつけました。

単行本で読めば思わず本を落としてしまうかもしれないほど、ゾッする巧みな描写もあるので、是非読んでもらいたい作品です。

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ヨル
漫画紹介をしているヨルです! 毎月150冊以上漫画を読むので、その中で特におすすめの漫画を紹介していきます! 次に読む漫画を探してる方はぜひ参考にして頂けたら嬉しいです^^
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