迫稔雄新作の『バトゥーキ』カポエイラを使った格闘技漫画のネタバレ感想
「嘘喰い」という驚異のギャンブル漫画を手掛けた迫稔雄先生の待望の最新作である『バトゥーキ』。
読者を魅了してやまない圧倒的な画力で繰り広げられるダンスやバトル、そして登場人物たちの表情。また、先の読めないストーリーに期待がどんどん膨らむ展開。迫先生ファンなら読まなければなりません。
そんな期待を満ち溢れた最新作『バトゥーキ』のあらすじや登場人物、見どころをネタバレと感想を含めてご紹介していきます。
迫稔雄の待望の最新作『バトゥーキ』のあらすじ
迫稔雄先生の待望の最新作で期待が高まる『バトゥーキ』の設定やあらすじをはじめにお伝えしていきます。謎や緻密な設定が多いストーリー展開となっていて、目が離せない作品です。
作品の設定や概要
- 著者:迫稔雄(迫稔雄先生のTwitterアカウントはこちらから!)
- 出版社:集英社(週刊ヤングジャンプ)
- ジャンル:バトル・アクション、青春
『バトゥーキ』に登場する用語は以下のようなものがある。
「バトゥーキ」とは幻の格闘技の名でもあり、その技は現代カポエイラの源流の一つともいわれている。
また打楽器のアドリブの演奏も「バトゥーキ」と呼ばれることがある。そして、「バトゥーキ」に合わせて人々は自由にダンスやゲームを始める。
一見意味のないもののように見えるが、皆で集まってリズムにのって騒いで遊びまわるのも「バトゥーキ」のひとつの意味である。
「jogo(ジョーゴ)」とは、自らを表現すること。そして、格闘でもある。ジョーゴの中では「Meia Lua de Frente(メイア・ルーア・ジ・フレンチ)」や「Rabo de Arraia(ハボ・ジ・アハイア)」と呼ばれる蹴り技がある。
また「Capoeira(カポエイラ)」とは、歌ったり、演奏したり、舞ったり、闘うもの。
あらすじ
ごく普通の家庭に育ちながらも、両親の厳しい束縛と言い切れぬ孤独感を持った主人公の女子中学生、三条一里。
ある日、学校帰りのコンビニで強盗に襲われかけた刹那、一里を助けたホームレスの動きをみて、摩訶不思議な体験をする。
そこから、一里は自身を魅了したホームレスの元へ行き、謎のレッスンを受ける…。
謎が多すぎる『バトゥーキ』の主な登場人物
『バトゥーキ』では主人公の一里も、その両親も、またホームレスも謎に満ちた存在であり、重要な過去を持っているキャラクターが多く存在します。
そんな深みのある登場人物たちをご紹介していきます。
三条一里(さんじょう いちり)
父親の転勤が多く、転校をよくさせられていた主人公の女子中学生。転勤が多い代わりに買ってもらったスケボーを使って遊んでいた。しかし、スケボーも父親に折られてしまう。
父親からは厳しく管理されている少女で、門限は18時で部活動も禁止されている。ちなみに嘘をつくのは、とても下手。
部活なども禁止されて縛られる中、ホームレスのメストレから「バトゥーキ」のレッスンを受けることで自由を感じるようになる。
スケボーで鍛えられたバランス力などから「バトゥーキ」の才能も垣間見える。
メストレ
ポルトガル人のホームレス。子どもたちから少額のもらい、「バトゥーキ」と呼ばれる打楽器のアドリブの演奏に合わせて、ダンスをするゲームを一緒に楽しんでいる。そして、そのお金を使ってホテルで寝泊まりしている。
身体能力が非常に高く、強盗相手でも攻撃を食らうことなく倒したり、余裕な雰囲気を見せながら一里の父親と互角以上の勝負をするほど強い。
双刃純悟(ふたば じゅんご)
メストレに教えを乞うている派手なビジュアルの小学生。10歳までチリに住んでいたためメストレの話す言葉をそこそこ理解することができる。メストレの通訳係として、代弁することが多い。メストレを尊敬している。
またかつてはブレイクダンスをしていて、どうしても勝てない相手がいた。もうこれ以上できないって位練習しまくったが、それでも勝てず落ち込んでいたところをメストレと出会う。
三条勲(さんじょう いさお):ペドロ
三条一里の父親を務める人物。以前はランサ・モルタウというブラジルのギャングに属していた。その中でも名の知れた男で戦闘能力は高い。ランサ・モルタウでは自動車窃盗と密輸の仕事をしていて、それを活かして現在は車の修理工などをして細々と生計を立てている。
我が子を思うあまり娘の一里に対して厳しく、部活動も禁止したり、門限も設けている。一里のことを考えた結果、組織を裏切っている。
三条弘美(さんじょう ひろみ):アルナ
三条一里の母親を務める人物。洗濯と掃除は苦手。一里のために組織を裏切っている。
ベルナルド・ジョーカー(B・J)
ランサ・モルタウというブラジルのギャングの一員。一里の父親を蹴り一発でノックアウトさせてしまうほどの強さを誇る危険な人物。
ランサ・モルタウでの仕事で不手際があり、そのため足を切り落とされて義足を付けている。そのことに対して憎悪と不便を抱いている。
組織の相続争いに一里を参戦させて財産を奪うことを目的として、一里を強くさせようとしている。
オバケはとても苦手。
佐伯栄子(さえき えきこ)
広島の小学校にいたときに少しだけ一里と一緒にいて、中学になり一里と再会した友達。一里と一緒になにかをやりたくて、放課後に一里と一緒にバトゥーキをやる。
佐伯悠人(さえき ゆうと)
空手をやっていて、栄子の兄である高校生。妹の栄子と一里と一緒にバトゥーキをやっている。はじめは恥ずかしがっていたが、徐々に難しさや楽しさを感じるようになる。
子どものころから空手をやっている。
広田流亜(ひろだ るあ)
一里や栄子が通う高校の教師。担任教師は1年目で非常にテンションの高い性格をしている。
そしてとても強いカポエイラリスタであり、同じくカポエイラをやっている一里に興味を持ち、カポエイラを教えるようになる。
カフェイン中毒でカフェインがキレると突然震えだす。
想田(そうだ)
一里と同じクラスの眼鏡をかけた研究好きの男子高生。昼飯を一里にもらうかわりに戦闘のアドバイスなどをしている。家はヤクザ。
雪菜(ゆきな)
悠人の彼女である空手家女子。剣で2位になる実力の持ち主で、ひょんなきっかけから一里に空手を教えるようになる。
女子ヤンキーのような見た目で口も悪いが、文句を言いながら一里の相手をしたりと意外と良い性格をしている。
また悠人のことは「悠人様」と呼んでいる。
咬泉(こいずみ)
ルータというグループで実践的なカポエイラを教えている人物。
朱摩羚(しゅま れい)
オープンホーダ(カポエイラリスタが集まるところ)で一里とジョーゴしたときに、いきなり一里を気絶させた女性。
荒々しい性格をしていて、実践でカポエイラを使う一里に興味を持つようになる。
甲斐圭(かい けい)
空手歴5年の高校1年生の男子。空手スタイルはフルコンタクト系空手で全身を武器にする実践的な空手をする。
ジュニア時代に出た全国大会で上級生や強豪相手に苦戦しつつも決勝まで勝ち上がり、決勝で反則技を食らわされたが、そこから暴走して、相手を滅多打ちにして全国制覇した。
そのときに「暴走列車」というあだ名がついたほど、暴走していたという。
稲荷遼(いなり りょう)
合気道家の高校生3年生の男子。一日一善をモットーにしているが、一日1回以上は良いことをしないことをモットーにもしている。
また一日一善は自らが相手を陥れて、相手を助ける行為をしているため自作自演。そんなひねくれた性格をしている。
しかし、合気道の腕はたしかで強い。
大谷桜(おおたに さくら)
クルミを素手で割るほどの怪力を持っている柔道少女。ちょんまげヘアーの特徴的な髪形をしている。
翔矢(しょうや)
大谷桜の兄。テコンドーをやっていて、カポエイラのことも知っているトサカ頭の男。
B・Jに脅されて、一里を狙う。
悪軍鉄馬(おぐん てつま)
反グレ組織悪軍連合の頭であり、B・Jが用意した一里の対戦相手の1人。
音楽にダンスに格闘に!『バトゥーキ』の見どころ3選(ネタバレあり)
『バトゥーキ』は音楽が始まったかと思えば、ダンスが始まり、そしてバトルに発展していく展開が読めない作品となっています。
そして、身体的な物語だけでなく、意味深な思い出や両親たちの発言などの伏線も多く散りばめられています。
そんな見どころに溢れる『バトゥーキ』の特に注目してほしいポイントを3つ厳選してお伝えしていきます。
バトゥーキという芸術
『バトゥーキ』では、打楽器のアドリブ演奏である「バトゥーキ」の自由さに魅了されます。
いきなり「バトゥーキ」のような音楽が始まったかと思うと、そこからリズムにのったダンスが始まり、それが今度は戦闘時に活用できる舞闘技「カポエイラ」であるというであることがわかり、動きの奥深さに注目せざるを得なくなります。
自由さから生まれるメストレのダンスのような動きが、バトル場面でどのように活躍するのかは見どころの1つです。
ディティールまで描かれた美しすぎる描写
迫稔雄さんの圧倒的な画力がもたらすダンスや戦闘描写は、思わず息を呑んでしまうほど美しいです。風を切る躍動感にあふれる動きに、衝撃が読者にまで伝わってくる臨場感あふれるバトルシーン。
そして、登場人物の感情をこれでもかと伝える迫力あるリアルな表情の数々に漫画を見ていることを忘れてしまいます。
そういったダンスや動き、戦闘場面、表情など見ごたえがありすぎる描写は注目必須です。
カポエイラと他武術の戦闘
そして『バトゥーキ』では、カポエイラと他武術との戦闘が最大と見どころといえます。
一里はB・Jに両親を人質に取られて、あらゆる戦闘を強いられ、その戦いから学び強くなっていくのです。
カポエイラを使って空手家が戦ったり、柔道が戦ったりと異種混合の武術のぶつかり合いは、手に汗握る展開となっています。それぞれの武術には、特性があり、それを制限するために場所を選んだり、相手の攻撃を予想して闘ったりと武術だけでなく心理戦もくりひろげられるのです。
カポエイラと言う日本であまり馴染みのない武術を使って一里が、どのように戦っていくのかを是非目に焼き付けてみてください。
期待感高まる『バトゥーキ』はこんな人におすすめ
『バトゥーキ』は、迫稔雄先生の作品が好きな方にはやはりおすすめです。「嘘喰い」で迫先生には驚かされたファンの方も多いと思いますが、その待望の新作で迫先生の画力や物語を改めて堪能できると涙が出てきます。
期待感は高まりすぎて、物足りなさを感じることもあるかと思いますが、これまでにない題材を使った『バトゥーキ』は是非読んでもらいたいです。
迫先生が描く物語、そして迫力満点のバトルシーン、かっこよすぎるキャラクターたちをまた味わいましょう。
管理人の思う『バトゥーキ』が伝えたいこと(感想)
『バトゥーキ』は、自由というものを伝えたいように感じます。部活も禁止され、好きだったスケボーも禁止され、門限も18時と束縛感を抱える主人公の一里が、「バトゥーキ」という打楽器のアドリブ演奏と自由なダンスを始めます。
縛られ続けた一里が「バトゥーキ」では何にも縛られず自由な動きを楽しむ姿は、見ていて羨ましくなります。
現代人の多くの人は、友達の目や親の目、社会の目に常にしばれて窮屈を感じてしまうかもしれません。しかし、そんな束縛も感じさせない自由さを表現する「バトゥーキ」は美しいです。
この作品では「バトゥーキ」を通じて自由の清々しさを表現したいように思えます。
「嘘喰い」という名作を世に放った迫稔雄先生の新作で、画力もストーリーも今後の期待感も自由さも楽しめる漫画になっているので、是非チェックしてみてください。